September 24, 2014

子供はわかってあげない(田島列島) わくわくどきどきで感動しました

51laox1kowl_sl500_aa300_ 青春ラブコメでいてストーリーはハードボイルドにサイキックに展開もやっぱり世の中善意で支えられているハートウォーミング。
 週刊モーニングにて短期連載していた作品が上下巻で発売されています。
 シンプルな絵に対して情報量の多いお話は、読み手の予想の斜め上を行っていて連載中から目が離せなかったですが、張り巡らされた伏線は上下巻一気読みに相応しく、何度も読み返したい名作としてもちろん買いました。
 甘酸っぱい夢物語のようでいてハードボイルドな現実感や切なさもあり思想的。細かいクスグリのギャグ。その全てが優しいシンプルな絵で表現されていてノホホンでユルイ気持ちとなりながらも、行間に結構深いものを感じます。練り込まれて作られたんだなと。感動しました。展開にいちいち驚きがあったのでストーリーには触れられなくゴメンなさい。
 と、オススメします。

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July 30, 2014

スポーツ大佐のテーマがNHKで流れるのってスゴイよねぇ

Sports_taisa 毎週楽しみに見ているNHKのアニメ「団地ともお」でスポーツ大佐のテーマが放映され驚いた。調べてみたらCDリリースされているじゃありませんか。ついでにiTunes storeにもあったりしてこりゃ凄い。
 わからない人に説明しますと「団地ともお」という所謂サザエさん的なギャグソープオペラの中で、小学生の中で大人気なんだけど大人にはサッパリ理解出来ないマンガの象徴として描かれる劇中劇が「スポーツ大佐」です。
 スポーツ大佐は国籍不明のサイボーグで耳はギョウザ、左手は山芋、脳は牛スジに改造されていて、クマとカラスをお供に連れて自分の師匠を殺した組織と戦って旅をするというストーリー。
 なんともシュールな、こうして説明文を書いていても頭がおかしくなるような設定ですが、そういった劇中劇をそのままなんの説明もなく番組としてオープニングテーマソングまで作って放送する遊びを、NHKの土曜日の午前中でやっているのが愉快ですね。この時間て子供向きでしょ。元々原作も青年誌に連載されているものだし、ある程度大人じゃないと笑えないんじゃないのかなと思いつつ、いやいや本気で作らないと子供だって笑うもんかということですか。
 良質な番組だと思います。原作共々長く続いて欲しいですね。


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August 21, 2012

映画「ソーシャルネットワーク」とマンガ「犬神もっこす」について

 ダークナイト・ライジングが不発だったのでやっとこさ取ったというか無理やり取った夏休みにはDVD三昧でござんした。
 最近の話題作としてドラゴンタトゥーとかブラック・スワンとか観ましたが、デビット・フィンチャーよかったですね。ドラゴンタトゥーもフィンチャーの集大成的な内容でよかったですが、印象深かったのはソーシャル・ネットワークでした。
 前から聞いていた話から、盛り上がりに欠ける何だかよくわからなかった映画・・みたいな終わり方をするんじゃなかろうか、と思ってたのですがさにあらず、ちょっと切ない後味のある良い映画だったと思います。
 これを観て思い出したのが、最近ワタシが読めば必ず声をあげて笑ってしまう週刊モーニング連載の「犬神もっこす」。
 両者の共通点は、主人公が明らかにアスペルガー症候群であることです。
 アスペルガー症候群の代表的症例は人の感情を読み取る能力の欠如です。一般的に人のコミュニケーションというのは、相手の仕草や表情から多くの情報を集めてその感情や理解の度合いを見計らって行われます。しかしアスペルガー症候群の人はこれができません。相手から「怒っている」と言われなければ怒っていることすらわからないし皮肉も通じないのです。ですから映画のマーク・ザッカーバーグは冒頭シーンで女の子と会話が噛み合いませんし、それで彼女が何故「もうつきあいたくない」と言われたのかも理解できていません。もっと痛烈なのはビールを投げてよこすシーンで、普通ものを投げて相手に渡すときは「投げるよ、ちゃんと取れよ」みたいなアイコンタクトがあり、投げるタイミングを計るまでの動作が存在するのですが、これがありません。サインが読めないから自分で出すことも出来ないのです。その場に連れてこられた初めての女の子にこれをやって女の子が怖がるシーンが印象的でした。
 マンガ「犬神もっこす」は、それまで友達が出来なかった主人公が友人を作るために演劇部に入り、そこで奇想天外な事件を巻き起こしていくという内容のコメディーです。これまでにもこういった空気を読まない主人公に周囲の人間がアタフタするというコメディーは沢山あり、どちらかというと主人公が確信犯的であったりしていたものですが、主人公犬神くんは純粋です。もうひとつ興味深いのは感情を読み取ったり同調したり出来ないのにもかかわらず、演劇部という感情を表現するという場に立つというストーリーです。これはコミュニケーションに障害がある人間がというフェイスブックというコミュニケーションの場を作るという映画ソーシャルネットワークがもつ切なさにも通じています。
 映画は事業の成功とその裏の切なさを上手く描いており面白かったですが、マンガの「犬神もっこす」はもう一歩踏み込んでいけているところがこれからの楽しみです。たとえば演劇のワークショップシーンとか。
 演劇のワークショップは状況表現・感情表現の訓練です。感情を読めない人がこれを行っていくとどうなっていくのか。新しい表現方法が生まれていくのか、それとも本人が変わっていくのか。それとも人気がなくなって連載が打ち切られてしまうのか。
 続きが知りたいので皆さんに応援してもらいたいですし、作者にも頑張って頂きたいです。

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February 14, 2011

L'INCAL アンカル (アレハンドロ・ホドロフスキー,メビウス )

61j4gvlswzl バンド・シネっていう響きだけでなんかアートの香りを感じてしまうのは、ミーがおフランスかぶれザマしょうか?
 メビウスといえば大友克洋のみならず我らが手塚センセも無視できなかった、おフランスのイラストレーターざんす。一度じっくり読んでみたいと思っていて、やっと手にしたのが昨年に出たこのアンカルざんすよ。
 ちょいと読み出してその面白さにシェー!!ざんす。完全にオトナの読み物。原作のアレハンドロ・ホドロフスキーは、エル・トポなんて作品を撮っているカルトな映画監督。大冒険がハード・ボイルドに展開されると思いきや、スピリチュアルなオチへと帰結していくストーリーはヨーロッパ的でそういうトコロがアートの香りなんざましょね。
 それでもストーリー展開や人物描写が分かりにくく思うのは、この日本で我らが手塚センセの築いたレベルの高いMANGAに慣れ親しんでしまっているからかもしれないざんす。

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December 25, 2010

海街diary (吉田秋生)

51ptbtqoool_sx230_ 前々から気になっていたんだけど、もう少しストーリーが進んだらまとめて買って一気読みしようと思っていた吉田秋生のシリーズモノ。3巻まで出ていたので先日買い込みました。
 鎌倉で暮らす三姉妹が異母妹を引き取って暮らしていくといったストーリーは悪人の出てこない家族劇で、ほんわかムードかと思いきや心にヒリヒリと来る切なさがなんとも絶品。またしても号泣させられてしまいました。
 入り組んだ人間関係は旧作の「ラヴァーズ・キス」の登場人物を巻き込んでいて、吉田秋生ワールドがたいへん立体的に感じられます。今回は同性愛の匂いがしないのも庶民的に感じられて、ワタシとしてはポイント高いです。
 吉田秋生の手法は、誰かが言った何気ない言葉がストーリーの中でリフレインされ、その場面場面で心への響き方が変わってくるという物語の動かし方なんですが、これって物語の中で登場人物の心が移り変わっているのと同じように、読んでいる人の心も移り変わっているってことなんだよね。そんなことに気がついて、読み終わった自分はやっぱり読む前の自分と変わっているわけなのだなぁと、あったりまえの感慨を持ったりしました。
 なんだか感動してしばらく引きずりそう。続きが楽しみなのだけど、これまた少し待たされそう・・。

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March 29, 2010

Batman: The Killing Joke(Alan Moore,Brian Bolland)

Batmankillingjokespecialalanmoorebr ついこの前復刻したアメコミの日本語訳ですね。もちろんオールカラー。

 どこかで書いた気がするんだけど実はTHE GREATEST BATMAN STORIES EVER TOLD 日本語版なんてのを持っていたのが我が家で最近発掘されて、見入っていたところだったんです。
 THE GREATEST BATMAN STORIES EVER TOLD 日本語版はバットマンのオリジナル・コミックスの集大成というか、初めて発行された第一話からこれまでバットマンに関わったアーティスト毎の作品や、一風変わったストーリーを集めた内容になっているもので、初期の頃のほとんどヒーロー物というよりも日本マンガ「ド根性ガエル」のキャラクターがバットマン・ロビンとペンギンにすげ変わったみたいなギャグタッチの話だったり、バットマンの誕生秘話の回とか、ニール・アダムスの参入による斬新でリアルなアクション画が導入されてきた回とか保存版ではあるけど、主流ではない記念碑的な話が多いのが特徴でした。
Greatest_batman_stories よってバットマンの最大の敵であるジョーカーがほとんど出てこなかったんですね。
 そんなこともあって、ジョーカー物の代表的なやつを読んでみたいと思って探していたところ、今回のキリング・ジョークの発売を知ったと。

 で、この作品キリング・ジョークはアダルト向けの残忍な描写で大変びっくりしました。だって、アメリカでコミックっていったら殆ど子供向けじゃないですか。それだからなのかストーリーが幼稚だったり絵が手抜きだったりってのもあるのだろうなんておもっていたのですが、こいつは完全にオトナ向けでアーティスティックに描かれているのがとってもクールでしたね。話の内容もジョーカーの誕生秘話になっていてとっても深い。
 クリストファー・ノーランのバットマン・ビギンズから始まるシリーズも少なからず影響をうけているんでしょうね。

 しかしながら、ニール・アダムス以降に出てきたアーティスト達による、オトナも読めるのを目指したアメコミは、確かにアーティスティックでカッコいいし大変評価されるのはよくわかるんだけど、ワタシからするとやっぱりコミック/マンガの手法は、日本のものが一歩抜きん出ていることは否めないです。解説にいろんな賞賛が書いてあったりするけど、そんな手法はトウの昔に手塚治虫を初めとして色んな人が普通に週刊誌でやってきてるんだよな。ただオールカラーがなかなかないだけで。
 アメコミってカッコイイなぁと思いつつ、それでもマンガ先進国として日本があるんだなって思い返すのでした。


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November 08, 2009

サムライ・ノングラータ(矢作 俊彦,谷口 ジロー)

51ne2mekisl びっくりするものが突然新刊で出た。マンガの単行本である。
 90年代初めにGOROにて連載していたコミックであるが、単行本は2巻までで完結していなかったのだが、ここへきていきなり1冊に全話収録した完結版が出たのである。
 国家間の利害関係に及ぶような事件を、ヨーロッパ・日本・アフリカを又にかけて活躍する怪しい自称商人と敏腕傭兵という2人の日本人のお洒落なストーリー。
 なにがお洒落って、インテリっぽい会話とリアルなファイトシーンに裏打ちされる信念を持った男たちがとにかくお洒落だなぁって思います。ファッショナブルとかそういうことでない、お洒落な生き方っていうのだろうか。
 そういうストーリーを書かせたらピカ一の矢作でありましてそらもう大好きなんですが、先だって出た「海から来たサムライ」という小説の改稿版のタイトルがやっぱり「サムライ・ノングラータ」って、自分の作品の中で全く異なった作品のタイトルがカブってしまってるてどういうことなんだろう?そら駄目じゃないのか?(その作品についての記事はこちら
 良いタイトルだと思ったらどんなものにも同じタイトルをつけるのだろうか?
 例えばそれが絵画と音楽というジャンルの違うものであればわかるんだけどね。コミックと小説ではジャンルが違うって認識なのだろうか?ストーリーも登場人物も全く違う別物なのに??
 どういう心境なのかとっても興味があるんだよなぁ。

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July 11, 2009

PLUTO(浦沢 直樹 手塚 治虫)

Pluto 浦沢直樹の「PLUTO」の完結巻が出た。
 手塚治虫が書いた鉄腕アトム「地上最大のロボット」を原作として、浦沢直樹のタッチで描かれる本作は連載当初、吉川英治の「宮本武蔵」を原作として井上雄彦が書いた「バガボンド」への期待と同じくらい大きく、興奮したワタシであったものです。
 画風の違いもさることながら、ストーリーについてもそのまま書くことはなく、ちょっとヒネったミステリー仕立てになっていて、アトムの勇敢な戦いというよりは、ヒューマンドラマが軸になっているところがよいですね。
 原作では、より強いものを倒していく戦いの連鎖が如何に不毛なものであるか(反戦)が大きなテーマになっていたと思いますが、浦沢版はそれに加えて、心とは何なのかを執拗に描こうと試みています。それが浦沢にとっての手塚プラスアルファを狙った点なのかと感じるのですが、ドラマの中で「最高のロボットだけが心を持ちえる」という定義がそこはかとなく感じ取れる部分については、少し不満でありました。
 テーマとしては面白いのですが、そこに深入りすると難しく中途半端になってしまった所は、今作については否めないところだったんじゃないでしょうか?「このドラマの世界では、ロボットもナニもみんな心をもっているんだよ」という前提で読めれば、あんまり変なツッコミを入れたくならないんですけどね。
 「(史上最高のロボットである)アトムは生命に感動出来るのか!」と、アトムに初めてあった狂言回しのゲジヒトが驚く場面は、大変興味深く面白いシーンですが、もとよりロボットであるゲジヒトが驚くという行為をすること自体、これまた驚きでなくてなんでありましょう。
 心は人の想いの投影であり、機械自体に心が宿るということはあまり信じていないドライなワタシなのです。
 だいたい「心」とはなんなのかを誰にでも分かるように定義し共有すること自体、今の人間には出来てないからね。だからこそ、宗教や哲学や芸術という形で手を替え品を替え人間は色々理解・表現しようとしている、と思うのです。
 しかしそんな不満は些細な揚げ足とりなだけで、ワタシとしては十分楽しめた作品でありました。
 アトムが飛び立つシーンは迫力があって凄くかっこいいし、登場人物たちの悩み・想いに涙を流したワタシでありました。

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June 11, 2008

へうげ十作 今焼が届く

Hakosugata

 モーニング連載中のマンガ「へうげもの」が好きだと予てから書いていましたが、先日単行本についていた応募券での懸賞に当選し、今焼が届きました。どしぇー、嬉しい!!この箱、ワクワクしますね。

Timeaftertime 中から現れたのは、眩しい白の椀。ケータイのカメラ写真じゃしょぼいので、詳細はリンク先を参照ください。
へうげもの official blog : vol.333 〈へうげ十作〉ロダンなうつわ・横山拓也の白皹碗
 確かに、使うには均整のとれていない形でありますが、なんとも朴訥な姿と白地に美しい貫入(釉薬に入っているヒビ)が気に入りました。
 大事にしたいと思います。

 連載中の「へうげもの」も利休の晩年期でまたひとつの山場を迎えており、目が離せないよぉ。

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May 08, 2006

小田扉三昧

487233689509lzzzzzzz 連休中は映画も見に行かず、内に籠もって音楽とマンガ。FF12とかもやってるけど、驚いたことに(本当に驚いているが)クリアしていない。ま、FF12のことはクリアしてから書くとして、今回はハマっていたマンガについて。
 前にも書いたけど、スピリッツ連載の「団地ともお」が好きで、連休中はこの作者、小田扉の本を買いあさり読みまくる。最高に面白い。
 「団地ともお」の感想として、「ほのぼの」「子供の時代の懐古」といったキーワードが出てきてますが、やはりそれって作品の主題としては的外れで、味わい深いのは、日常とほんの少しズレた、ある意味シュールと表現してもいい落差が産む笑いなのだと、再認識しました。

 昔、寺山修二の文章で、「私は笑いが嫌いだ。何故なら笑いは差別だからである。」というのにショックを受け、目を見開かされた気持ちになった事があります。笑いというのは、自分の持っている基準規範と、対象物を比べた落差の上で、何処か自分が優位であるというスタンスに立っているという意味があるというのですが、落差という観念は同意出来て成る程と思ったけど、優位に立ちたいという気持ちには、今にして思うと同意できないなぁ。
 ワタシは笑いに関して、差別だとはちっとも思わないのだけど、その人の持っている日常とか規範と対象となるものの落差から湧くものだと思います。この落差の加減で、その人の面白がり加減が決まってくるのですが、小田扉の作品は、その加減が絶妙なんです。
 これは、ワタシに限ったことなのか判らないですが。

 ちなみに色々読んで、一番笑ったのが、冒頭写真の「そっと好かれる」

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