May 12, 2013
August 21, 2012
映画「ソーシャルネットワーク」とマンガ「犬神もっこす」について
ダークナイト・ライジングが不発だったのでやっとこさ取ったというか無理やり取った夏休みにはDVD三昧でござんした。
最近の話題作としてドラゴンタトゥーとかブラック・スワンとか観ましたが、デビット・フィンチャーよかったですね。ドラゴンタトゥーもフィンチャーの集大成的な内容でよかったですが、印象深かったのはソーシャル・ネットワークでした。
前から聞いていた話から、盛り上がりに欠ける何だかよくわからなかった映画・・みたいな終わり方をするんじゃなかろうか、と思ってたのですがさにあらず、ちょっと切ない後味のある良い映画だったと思います。
これを観て思い出したのが、最近ワタシが読めば必ず声をあげて笑ってしまう週刊モーニング連載の「犬神もっこす」。
両者の共通点は、主人公が明らかにアスペルガー症候群であることです。
アスペルガー症候群の代表的症例は人の感情を読み取る能力の欠如です。一般的に人のコミュニケーションというのは、相手の仕草や表情から多くの情報を集めてその感情や理解の度合いを見計らって行われます。しかしアスペルガー症候群の人はこれができません。相手から「怒っている」と言われなければ怒っていることすらわからないし皮肉も通じないのです。ですから映画のマーク・ザッカーバーグは冒頭シーンで女の子と会話が噛み合いませんし、それで彼女が何故「もうつきあいたくない」と言われたのかも理解できていません。もっと痛烈なのはビールを投げてよこすシーンで、普通ものを投げて相手に渡すときは「投げるよ、ちゃんと取れよ」みたいなアイコンタクトがあり、投げるタイミングを計るまでの動作が存在するのですが、これがありません。サインが読めないから自分で出すことも出来ないのです。その場に連れてこられた初めての女の子にこれをやって女の子が怖がるシーンが印象的でした。
マンガ「犬神もっこす」は、それまで友達が出来なかった主人公が友人を作るために演劇部に入り、そこで奇想天外な事件を巻き起こしていくという内容のコメディーです。これまでにもこういった空気を読まない主人公に周囲の人間がアタフタするというコメディーは沢山あり、どちらかというと主人公が確信犯的であったりしていたものですが、主人公犬神くんは純粋です。もうひとつ興味深いのは感情を読み取ったり同調したり出来ないのにもかかわらず、演劇部という感情を表現するという場に立つというストーリーです。これはコミュニケーションに障害がある人間がというフェイスブックというコミュニケーションの場を作るという映画ソーシャルネットワークがもつ切なさにも通じています。
映画は事業の成功とその裏の切なさを上手く描いており面白かったですが、マンガの「犬神もっこす」はもう一歩踏み込んでいけているところがこれからの楽しみです。たとえば演劇のワークショップシーンとか。
演劇のワークショップは状況表現・感情表現の訓練です。感情を読めない人がこれを行っていくとどうなっていくのか。新しい表現方法が生まれていくのか、それとも本人が変わっていくのか。それとも人気がなくなって連載が打ち切られてしまうのか。
続きが知りたいので皆さんに応援してもらいたいですし、作者にも頑張って頂きたいです。
April 14, 2012
やっぱ三船敏郎はスゲーやということで「レッドサン」を観る
先日TVでジョン・フランケンハイマーのグラン・プリを観ました。
壮絶なレースシーンと説明がうまくできないような男の生き様があいまって織りなされるドラマは名画と呼ぶにふさわしいもので感動しました。そして、これに出てきた三船敏郎のオーラが凄かった。
一応主人公はジェームズ・ガーナーですがどちらかというとレーサーとその周辺の人々の群像劇に近い。登場人物みんながドラマを持っている。けれども三船敏郎がひとたび現れると、何と言いますかそのオーラで他の登場人物を喰ってしまう感じ。
そういうのを観て、ちょいと三船敏郎の主役級の映画をまたじっくり見直したいなと思って引っ張り出したのが「レッド・サン」。
三船敏郎といえば、「用心棒」だったり「椿三十郎」だったりと黒澤明の作品が大大メジャーでしょうが、あれはクロサワ映画。黒澤明の作り出す画像がミフネのオーラを更に凌駕していて、「ああ。三船敏郎を観たなあ」ではなく、「クロサワ映画をみたなぁ」になってしまう。
で、何ぞちょうど良い塩梅の作品は?と思いついたのが「レッド・サン」。この映画、世間ではあんまり評価されていないようですが、ワタシは何故か心に残る映画なのですね。
西部劇でありますが、フランス・イタリア・スペインの合作。しかも監督はイギリス人で「ロシアより愛をこめて」を撮った人。ま、マカロニウエスタンの亜流と言っていいかもしれないですね。タイトルバックがいきなりフランス語なのが何か「これから異次元に連れていかれる」みたいな気持ちにされます。
配役はチャールズ・ブロンソンとアラン・ドロン、それにミフネ。ブロンソンはアメリカ人でありますが、元々フランス映画で活躍してる俳優なんですね。アラン・ドロンとの共演の「友よさらば」とかイェーイ。やはしミフネのオーラに対抗できるのはブロンソンしかいないでしょう。濃いです。男くさいです。
ストーリーはアラン・ドロン扮する強盗団のボスに宝刀を奪われ友の敵を討つべく追いかける侍のミフネと、やはりドロンに裏切られ分け前を取り戻そうとするブロンソンが二人で旅をするバディー物。ミフネのキレのある殺陣とブロンソンの無法者らしい仕草、そしてなんともウィットに富んだ会話と男同士のぶつかり合い。
今見返すとクライマックス決着のシークエンスはもう少したっぷりととって欲しかったかなとも思いますが、ラストシーンの余韻とか心に残るものがありますね。
なーんかお勧めのビデオない?とかお探しの方へ参考になれば。
August 29, 2011
レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー [DVD] 祐木奈江の怪演にしびれる
噂は聞いていたんだけどやっぱり単館上映で観に行く機会に恵まれずdvdにてやっとこさ拝見。アイスランドのスプラッター映画です。
アイスランドは世界3位の捕鯨国だったワケで、捕鯨禁止運動の煽りを受けて生活が干上がった捕鯨一家がホエール・ウォッチングに来た観光客を虐殺するという内容。この殺戮一家の首領がシーシェパードの隊長にソックリだったり、映画ジョーズとかのパロディーがあったりと、スプラッター映画特有の遊びが面白い。
登場人物に感情移入できないように意図的に作られている感あり、そのミもフタもなさを笑い飛ばすもよし、現状批判と捉えるもよし。
日本から祐木奈江が参戦しておりますが、この怪演にも目を見張るものがありました。
アイスランドでもうひとつ連想するのがビョークというアーティストの存在であり、これも切っても切れない関係性で本編に関わってきているなぁと思いきや、脚本家はビョークの歌詞書いたりしていたそうな。
ワールドワイドに通じる話題性をもって、アイスランド映画を世界に発信しようという意気込みを買います。
March 06, 2011
やっと「キックアス」が観られた こりゃスゲー
噂になっていた映画でとっても観に行きたかったんですが、単館上映で機会に恵まれずついに行けずじまい。すぐにDVDになってレンタル開始するというラッキーな展開でやっと観られました。ウレシイ。
スーパーヒーローに憧れるサエない高校生が主人公のコメディータッチの映画というと「なんだかな」というB級C級路線に聞こえますが、舐めてるとひどい目に合います。後半になるにしたがってモラル無視の大ヴァイオレンスに発展していく。子供は見ちゃ駄目です。
面白かったわー。自分をリベラルな人間だとあんまり思ってなかったけど「いいのかよ?こんなの上映して・・」と思うくらいモラルに反したシーンが出てきたりします。ブラックなジョークなんでしょうけどね。かわいい子供が関わってくると笑いがひきつってしまう。
ネタバレしてても楽しめるのですが、先入観なしに観たほうが面白いのでストーリーは語らないことにします。タランティーノ映画で笑える人は必見。
過去のアクション映画のオマージュがちりばめられていたり、監督の映画好きがしのばれるなと思ってたら、スナッチ のプロデュースしてた人だったのね。
こんなに面白いのに日本で単館上映だったのは、日本において外国産スーパーヒーロー物がウケない事実がある(そう日本にはウルトラマンと仮面ライダーがいて必要十分なのかもね)ということと、R指定だからなんでしょうが、惜しいですね。
February 11, 2011
談志が帰ってきた夜(DVD付)
声が出なくなってしまってもうこれが最後だといつも言っていた休養前、談春の二人会の楽屋にて石原慎太郎は「今日のコレでいいんだよ。枯れた味で新境地を切り開けば」と言っていたその通りの演目だった。
首提灯。斬られてつながらなくなっている首が歩くほどにずれていく動きの滑稽さ。噺の技術だけでないところで再始動の演目を決めてくるあたりの自己分析と、若い頃につくったスーツをバシッとキめて楽屋入りする気合と、「今日の客はマニアックな奴が多くて異様な雰囲気」と志らくが言えば、そのマニアックさを凌駕する落語のナンセンスパロディー(イリュージョンとか落語チャンチャカチャンとかよばれている)をマクラで繰り広げる大胆さ。全てが立川談志だった。
ブックとして添えられている日記は休養時から復活にかけての時期のもので「何も面白いと思うものがない」と語る、絶望よりも手に負えない無気力さから立ち上がってくる経過を垣間見せてくれるのだが、字面だけ読んでいると結局言っていること自体は変わっていないところが一筋縄でいかなくて面白い。無気力な発言がだんだん単なるジジイの小言に変わってくる妙味と言えばよいのか。
これまでの立川談志の舞台や映像は、豪胆な論理で構築した噺家というパッケージが前面に出されていて多分それが談志の自己防衛だったんだろうけど、今回のコレは立川談志という人間そのものが感じられるもので、感慨深いDVDBOOKだった。多分取り巻く人たちの愛情とそれに答える家元の感謝の気持ちそのものがパッケージされたものなんだろうね。
January 08, 2011
今年最初に買った脱力モノ
好事家の悲しいサガで、普通の人ならハナも引っ掛けないものにお金を出してしまう。ストーンズの駄目駄目な演奏ステージのブートレグとかならまだ良い方で、自作の演歌を白熊に歌わすゲームとか、バックミュージックもナレーションも無しに延々と秘宝館の内部の映像が2時間流れ続けるこのDVDとか、説明しているだけで脱力してしまうものばかり・・。
秘宝館は70年代初頭に出現したエロ文化の博物館というかアミューズメント施設ですね。温泉地とか観光地の呼び物として各地に出来た経緯があるんだけど、ワタシが推測するにこの時期、大阪万博の大成功を受けて、娯楽に特化した展示施設なら金になるぞ的発想が根源にあったんだろうな。
どこもかしこもつぶれてるみたいですが、熱海の秘宝館は未だに盛り上がっているそうですね。メンテナンスも行き届いているし。
さて、この伊勢の秘宝館は「元祖」といわれておりますので日本で最初の秘宝館なんですかね?映像を見る限りかなり大きな規模です。
こういうあらぬ妄想に特化したモノって結晶化していくとアートになっていくのですが(たとえばSMのコスチュームとかね)、それが温泉地の呼び物でこしらえたという地元民の生活感・現実感とが綯交ぜになるとキッチュな感触を産むんですね。そこがカワイかったりもするので、ワタシの好むトコロであります。
冒頭で申し上げました通り、DVDの映像はこの秘宝館をあますところなく見せるというスタンスで、チケット売り場の前から順路に沿ってゆっくりゆっくりとカメラが進んで行きます。DVDで見る秘宝館見学の疑似体験ということなんでしょう。だからナレーションも後付の音楽もいっさい無しという潔さ。
で、ワタシ最後まで鑑賞できずに途中でぐうぐう寝てしまいした。多分何度やっても最後まで見ることが出来ずに眠ってしまうでしょう。そういうユルさなんです。秘宝館って。
August 29, 2010
映画「キャデラック・レコード」について書きます
この間ちょろっとつぶやいておりましたが、DVDにてキャデラック・レコードを観ました。
観たいと思っていた映画だったんだけどついぞ忘れていて、先日BSの「SONG TO SOUL」という番組で「サティスファクッション」を特集していたときに参考映像としてこの映画が使われたのをみて、思い出したという次第。
アメリカのチェス・レコードの伝記映画とあっては、このワタシが興味を惹かないワケがありません。どんな映画かとか音楽的なことは以下のブログの方が的確なのでそちらへ譲り、ワタシは少し違う視点で書きたいと思います。
【映画】キャデラック・レコード: DOWNTOWN DIARY
前々から事あるごとに言ってて恐縮ですが、映画にもお国柄ってのがあってフランス映画だったら「愛」を語り、日本映画は「人生」を、ハリウッドは「正義」を語っているんだろうなってオチをよく話していたものでした。ハリウッド映画ってプロパガンダであり、ありゃ別の種類の映画だと言ったのは井筒監督で、本当のアメリカ映画は「家族」を描く傾向にあると聞いて、なるほどと思ったものでした。「家族」というより「ファミリー」といった方がピンとくるかもしれません。
今や重鎮となったクリント・イーストウッドの撮る映画は、「ミリオンダラーベイビー」でも「グラントリノ」でも、古くは「アウトロー」でも「ファミリー」とは何かを描いたものだし、歴代オスカー作品はその多くがファミリーの形成がテーマになっていたと思います。
「キャデラック・レコード」は単にBLUESが世に出る歴史という成功物語とは別に、レナード・チェスとマディー・ウォータースが作ろうとした「ファミリー」の物語だとして観ると、なんとも切ない映画だったと思いました。マディーの奥さんを母と慕い死んでゆくリトル・ウォルターや、結局黒人と白人との亀裂は埋められないのかと会社を売る決心をするレナード。
少し残念なのは、こうした物語に特化して映画が終わってくれれば、もう少し泣けたのになと。登場人物たちのその後の栄光は、こちとらもう分かり過ぎるくらい知ってるんだからね。
でも、あとからあとから語りたくなる良い映画だったと思います。サントラも買おっと。
July 22, 2010
Sticky & Sweet Tour(Madonna) 彼女のお気に入り
結構好きでたまーに観かえしているミック・ジャガーのdvd「BEING MICK」で、ミックが末娘(ジョージア・メイ 当時10歳くらいか?)の気を引こうと、ライブを観に連れてってあげるよというシーンがある。ミックの気も知らず「えーっ、次の日学校だし夜遅くなるのはヤだからいかなーい」なんて言われてしまうのだが「マドンナのライブだよ」と言うと、もう狂喜乱舞で「いくいくいくー」と喜ぶジョージアが印象的でありました。(ハナシそれますが、そんな彼女ももうこんななのね)
おなじく「BEING MICK」にて、どっかのパーティーでミックとエルトン・ジョンの「マドンナの今度のライブ観たかよ?」なんて会話。
もう60年代の黎明期からやってるロックの大御所たちからそのお子様まで、完全に無視できない存在となってるマドンナ様、といったところでもう50過ぎてるやっぱり大御所。そんなマドンナの最新映像がこれ。やっと観ました。
デビューした頃は俺達なんかバカにしてたんだけどね。マドンナ。継続の力にとうとう参りましたと言わざるをえなくなったワケですよ。
もう80年代のレベッカだってこの人の影響バリバリっていうかパクリだろうし、いまのJPOPの歌姫なんて呼ばれる人たちのコンサートだって、この人のやったことのモジリでしょ。先日倖田來未のPVみたら、ついこの前のマドンナのコスチュームそのままの格好をしてたので、開いた口が塞がらなかったよ。いいかわるいか別にして、とにかくその影響度たるや。
dvdを観てその大掛かりな最新テクノロジーを駆使したエンターティメントに、やっぱり開いた口が塞がらない始末。すんごい。
バック・ダンサーの契約でマイケル・ジャクソンと取り合ったという日本人ダンサー「Kento Mori」のシーンも見所ですね。豪華な衣装と立体型LED映像装置の導入。そしてショーを支える肉体的体力への驚嘆。マイケル・ジャクソンがいなくなった今、アタシじゃなくて誰が出来るのよ?という自負。
みんなで楽しく見ましょ。
May 20, 2010
Peeping Lifeの「おでかけバカップル」は笑った
もう説明もいらないから、youtubeで見て!でもいいんだけど、少し解説をします。
先日のウサビッチに続いて、ちょっとユルいギャグのショート・アニメを最近探しては観ていて、引っかかった作品。
このDVDでは冒頭の「おでかけバカップル」って作品が白眉。っつーか映像作品でこんなに笑ったの久しぶりだな。
3Dのアニメのくせにすごくユルい映像で、台本なしのアドリブでコントとも呼べないような寸劇が行われる内容。CSで放送されていたものが、DVDにパッケージされて発売されてます。
大体の作品がそういったユルいフォーマットでそれなりなのですが、「おでかけバカップル」だけは、役者のアドリブ合戦がどんどん追い詰められていって神がかったことになってると思うなぁ。何回みても面白いわ。
ショートなので映像がWEBにあるだろうと思ったら、ありました。韓国語の字幕入りですが・・・
より以前の記事一覧
- I STAND ALONE(仲井戸麗市) 2010.02.02
- Good Evening New York City(Paul McCartney) 2010.01.03
- 立川談志「落語のピン」セレクションDVD-BOX Vol.参 2009.09.27
- 姿勢を正して見てみる 2009.09.02
- Unplugged...and Seated(Rod Stewart) 2009.04.09
- 昭和八十三年度! ひとり紅白歌合戦(桑田佳祐) 2009.03.31
- 立川談志 立川談春 親子会 in 歌舞伎座 2009.01.05
- 立川談志「落語のピン」セレクション Vol.1 2008.12.25
- 立川談志 ひとり会 '92~'98 「初蔵出し」 2008.07.05
- 忌野清志郎 完全復活祭 日本武道館 2008.06.03
- Ashes and Snow(Gregory Colbert) 2008.04.25
- ザ・スライドショー10 みうらさん、やりすぎだよ! 2008.03.22
- 志の輔らくごのおもちかえりDVD 1 「歓喜の歌2007」 2008.01.29
- 細野晴臣イエローマジックショー 2008.01.03
- DIRECTORS LABEL ミシェル・ゴンドリー BEST SELECTION 2007.12.31
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