« December 2014 | Main | February 2015 »

January 20, 2015

フィルムノワール/黒色影片(矢作俊彦) 矢作作品を読むのは至福の時間

611niw57ql_sy344_bo1204203200_ はい。楽しみにしていた矢作俊彦の新作です。
 Twitterで表紙のドタバタが伝えられていたのもご愛嬌で楽しい気持ちになりますね。
 今回は日活アクション映画に捧げられたハードボイルド作品で、宍戸錠も登場させるサービスであります。二村シリーズとの事ですが、元々矢作作品の登場人物は手塚治虫作品のようなスター・システムに近く、名前は一緒でも前作と関連がなかったりするのが常なのですが、今回はロング・グッドバイの後日談のように二村は警察を辞めた形からスタートしているのが、「おっ」と引き込まれます。
 ワタシが夢中になっている矢作作品の面白さの一つは情報量の多さです。ハードボイルド文体を取っている事で表現される比喩や登場人物のシニカルな物言いの中にストーリーと直接関係のない情報がふんだんに取り込まれている事で、例えばヘミングウェイのキーウェストの家の話や往年の映画俳優の逸話が直接それと分からないように盛り込まれいて、そういった情報が何の事か分かると物語が更に芳醇に感じられ、又ある時には伏線になっていたりというところがじっくり読むに値するものなのですが、そこはある程度リテラシーを必要とするものであるがゆえに、好みが分かれるところかも知れません。
 今作では日活アクション作品の名場面をつなぎ合わせてもう一つのドラマを作っているという仕掛けがあり、ワタシの分かる範囲では裕次郎の「赤いハンカチ」や「二人の世界」などのセリフが面白くコラージュ(いやモンタージュ)されておりそういった所を探す楽しみもつきませんでした。
 そして矢作の提唱するハードボイルド小説の中で、探偵は正義のためではなく真実を探求するために街を彷徨い歩くということを踏襲しているところがブレてないですね。
 最後にチョッと泣かせる所もいいじゃないですか。小説は泣かせてくれてナンボですよ。それが哀しくてもカッチョよくても感動であってもいいから泣かせてくれること。これにかぎります。
 楽しゅうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 07, 2015

北斎のタッチとメビウスのタッチって何か通じるところがあるね

Hokusaimisimagoe
 去年の暮に衝動買いした北斎の木版画。
 この絵を一見して、山や雲の表情にぐっと来たワケなんですが、遠い過去の人の描いたものとすぐ思えなかったんです。
 北斎といえば富嶽三十六景とかがすぐ頭に浮かびますが、所謂シンボル化されたあの富士山のイメージや江戸時代を匂わす景観が排除されると、もうちょっとオサレな感じ、例えばバンド・デシネのメビウスみたいな印象だと思いませんか?と。
 ヨーロッパの絵画史でも浮世絵の影響というのはよく語られており、そこで語られる技法などから「なるほどね」と判ったようでいながら、どうしても「江戸の風俗」というモチーフが持つ意味をワタシ達は当時の木版画に求めているところがあって、絵そのものを味わうのではなく江戸を意味するモチーフを味わっているきらいがあったなと気が付いたわけです。
 別に絵の味わい方なんて人それぞれでよいのですが、なにか目からウロコが取れて新しい見方が出来るようになったのを記念して購入。版画なのでそんなにお高いものではありませんことよ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« December 2014 | Main | February 2015 »