テレビに映る中国の97%は嘘である (小林史憲) 現実に合った探偵小説と思って読むとこの上なく面白い
テレビ東京で2008年~2013年まで北京特派員として駐在し「ガイアの夜明け」の現プロデューサーである著者が、中国での取材体験を赤裸々に綴ったルポ。
本のタイトルから、実は本当の中国はこんなにエライことになっているのだ!という内容を想像してしまいますが、別段ワタシの想像を超えるものでもなく「まぁそんなかんじだろうね」という中国の実情でした。ワタシの場合、仕事で向こうに行く時やその後も中国情勢のことは気にしていたし、向こうの人と実際に触れ合った実感もありなので予習済みで驚かないってことかもしれないですが、それにしてもこのタイトルはあからさまに人の興味を煽るにもかかわらず内容を示していなかったです。
ではどんな内容かといえば、中国での有名事件を追うテレビマンの現地奮戦記といった方が相応しく、そういった見方で読んだときにドえらく面白い本でした。
ある章は記者仲間で呑んでいる時に中国製毒入りギョーザ事件の犯人逮捕の知らせを受け酔っぱらったまま現場へ急行、犯人の「顔写真」の入手とその「ひととなり」がわかるインタビューを取るための手段と勝ち取ったスクープのほろ苦い結末。またある章は反日デモの取材に危険だと近寄らせない警察との騙し合いと暴徒に日本人だとバレ大変な騒動になる顛末。
中国のことを上から目線で「しょうがねぇ国だな」と見下すナショナリズムを煽る批評とも違い、悪どい警官と駆け引きをし世の中に皮肉を言いながら都市を彷徨う探偵の小説に近いですね。探偵は正義のためでもなく、ありきたりな事実を知るためでもなく、ただ真実の探求がしたいのだと言ってました。フィリップ・マーロウ(増沢磐二は友情のためだって公言するところがちょっと違うんだよなぁ)。テレビ屋ということであれば景山民夫の「トラブル・バスター」か。
もちろんハード・ボイルド小説とは違いますが、そういった事件モノの物語が好きな人は大変面白く読めると思います。
« 遠野物語remix(京極 夏彦、柳田 國男) | Main | Mick Jagger & Keith Richards perfect style of Mick & Keith(Mediapal Books) 凄い写真集が出ている。半端なムック本よりずっと良い。けど買ってない。 »
The comments to this entry are closed.
Comments
著者です。読んで頂きありがとうございました。中国を好き嫌いではなく、自分が体験したままに描いたつもりです。実はこのたび、第2弾として「騒乱、混乱、波乱!ありえない中国」(集英社新書)を出版しました。よりディープに中国が抱えている問題に迫ったつもりです。よかったら、ぜひこれも読んでみて下さい。
Posted by: 小林史憲 | November 23, 2014 04:46 PM