遠野物語remix(京極 夏彦、柳田 國男)
柳田國男の名著と言われる遠野物語の現代語訳。
怪談・妖怪物を分解してミステリーに構築し直す作風で、四谷怪談を切ない純愛ストーリーに仕立てた京極がどのように遠野物語を料理するかと思いきや、独自の解釈・意訳はほとんど入れずそのまま現代語訳としている。大きく意図的に手を入れたのは章立ての順番を変えるということで、各小編の関連性が強調されて、遠野という所・人々がどんなかが、とてもすんなり読み解ける工夫がなされている。このやり方は当たりだし、正しくRemixというタイトル通りで小気味良い。
もう一つ感じたのは、名調子・名文と言われる原典の文体の肌触りをどのように現代語で表現するかに力を入れている様子が分かることで、序章にある原文のキラーフレーズ「平地人を戦慄せしめよ」はそのままに、書き出しに気合いが入りまくっていて、ちょっと立ち読みして「ああ、これなら持って帰ってゆっくり読みたいな」という気持ちになったものでした。後から調べるとこの書き出し部分だけは原文にない表現を入れているんだけど、この部分こそが京極版遠野物語のワクワクする部分だったです。以下珍しく引用します。
彼の故郷は遠野と謂う。
遠い、野と書く。
どこから遠いのか、どれだけ遠いのか、判らない。
これが最初にあるだけで、以降の物語の裏に潜む「何か」に想いを馳せずにはいられなくならないでしょうか。この文章に最後まで引っ張られてしまった読感でした。
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