アーウィン・ブルーメンフェルドの写真展はなかなかよかったです
アーウィン・ブルーメンフェルドは1940~50年代に活躍したファッション・フォトグラファーで、いま東京都写真美術館で個展が行われています。
年代から察してファッション写真いまむかしを考えるような展覧会に思われがちですがフタをあけてビックリ、カラー復元された鮮やかなプリントはただ美しいだけでなく、マスターピースと呼んでいい普遍的なアート性を持ったものでした。戦前戦後のファッション雑誌の写真というともっと商品に対して即物的なものという固定観念が大きく覆った次第。
ダダイズム、キュビスム、シュールレアリズムといった20世紀初頭のアートの流れを写真表現に吸収しそれをもってメッセージを発信することが、当時流行最先端の商業写真としての役割を果たすための有効なアイデアだとして推し進めることは相当な努力が必要だったでしょう。そうした意味で彼は現代のファッション写真にアート性をもたらせた第一人者といえるでしょうし、今も変わることなく古臭いと思う作品がないことに不思議はありません。むしろ現代のファッションフォトグラファーの作品の元ネタはすべてここに集約されるんじゃないか?と思うくらいです。
50年代のヴォーグの表紙を飾っている頃はさすがに世界一ギャラの高い写真家と呼ばれていますが、1897年にドイツで生まれたユダヤ人というその来歴を見て、この人の人生は波乱万丈大変なものだったのだろうと想像に難くありません。ふたつの世界大戦・ナチの台頭を乗り越えるのにはただ好きなことだけをやって生きていけるワケがなかったはずです。
1930年代の彼の作品にヒトラーを風刺するコラージュ作品を見つけたとき、彼の写真へアートを持ち込むパワーはそうした反骨精神にあったのだろうなと感じました。
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