このインチキ野郎! Kitano par Kitano
言ったのは立川談志師匠。
たけし・談志・太田光と会食したのち帰る段になって談志は徒歩であったが、たけしはロールスに乗り込んでいた。「お前そんなの乗ってるのか?」と聞いたら「バッタもん屋で買ったんですよ」と言い残したそのあと、クルマに向かって浴びせかけたセリフ「このインチキ野郎!」。
そういう罵声を真面目にたけしに向かってかけられるのは、今となっては談志師匠しかいない。後日談で談志師匠にたけしは「いやぁ、まったくその通り。フランス人まで騙しちゃってるから・・」
今年の3月、カルティエ現代美術財団で行われた北野武の展覧会も大盛況だったそうで、どんなのだったんだろう?と調べたらこんなの。
フランス、カルティエ現代美術財団でビートたけし/北野武の展覧会 | エキサイトイズム
どこか人を喰った感というか茶化されてる気がしないでもない作品群に、フランス人は何を思うんだろうね。
KITANO映画がどうしてフランス人にウケるのか?それが知りたくてこの本を手に取りました。フランスの記者が自国向けに書いたインタビュー集の日本語版。どうもインタビューでの通訳はゾマホンらしい。
このたけし本、今まであまり語ってなかった自分の映画についての考察がなかなか良い。たけしを知るならこの本と「コマネチ!」で決定版でしょうね。日本人に向けて語ると少しテレが入るのか茶化したトークになるのだろうけど、これは本当に正直な気持ちを語ってる感じがする。
ピカソにバラの時代や青の時代があるようにビートルズにも初期・中期・後期があるし、たけしにもそんな期(ピリオド)があると思います。ツービート時代・ひょうきん族~フライデー事件・バイク事故の前と後、バイク事故以後にもうひとつ区切りがあるような気がして(たぶん座頭市前後)、それが何か知りたかったんですが、よくわからなかったのが少し残念。瀕死の重傷を負う前と後では彼の「死」に対する感覚・表現が変わるのですが、ここ最近の彼はまた少し違った方向性を持ってきた気がします。なんというか、なんでもアリの方向性が(オーディエンスに対して)優しくなった。多分その変化がなければ、展覧会なんか開かなかったはずなんだよな。多分変化については、本人もわかってないんだろうけど。
ワタシの北野武への共感は「死」との対峙というところにあるんだけど、この本でも「死」についての考察を色々語っています。そのなかで、「「愛」って少しずつ死ぬことでしょ?」ってキラー・フレーズを言ってて、そういうフレーズがチョロと出てくるところとかが、フランス人の心を鷲掴みにしちゃううんだろうなぁ。
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