犬なら普通のこと(矢作俊彦,司城志朗)
ミステリ・マガジンに連載されていたと既に聞いていたのでこの本が出たのには驚かなかったが、このコンビ、実に25年ぶりだそうである。
カドカワ・ノベルで3作品を出していて、それらは矢作が映画用に書いていたシナリオから司城が小説におこすという分担で作っていた本だったというが、その後シナリオは山のようにあったものの、ふたりが喧嘩別れで今日にいたると聞いていた。本当かどうかは知らないが。ラジオのインタビューで矢作が語っていた内容である。
今作はどんな分担か知らないが、過去の3作品がハリウッド映画並みにスケールのでかい冒険アクションだったのにくらべて、今回は沖縄が舞台のヤクザ・犯罪小説となっているので、幾分スケールは縮小したかなぁという気持ちは否めないし、もしかすると映画用のシナリオなんかなくて、矢作がストーリー・プロットの案を出して司城が小説化したというだけなのだろうか。
沖縄は20代の前半くらいに行ったことがあって、金のない若造は海でのリゾート遊びよりも街の方に好んで飛び込んで行ったのを覚えている。だから沖縄というと、青い海よりも名護とかの街で感じた皮膚感覚が蘇る、その感覚そのままの街の描写が良い。なんともやるせない感じ。
出てくる人物たちは、薄幸の女や自分勝手な男どもばかりの悪漢小説。こういった小説はどこが面白いかというと、出てくる人間全てが信用おけないので、どんな結末になっていくのか全く予測がつかないこと。
そんな小説なので筋にはいっさい触れないでおきますが、本当に色々裏切られます。
読後に残るやるせなさは、やっぱり沖縄の街を想わせるなぁ。
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