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July 11, 2009

PLUTO(浦沢 直樹 手塚 治虫)

Pluto 浦沢直樹の「PLUTO」の完結巻が出た。
 手塚治虫が書いた鉄腕アトム「地上最大のロボット」を原作として、浦沢直樹のタッチで描かれる本作は連載当初、吉川英治の「宮本武蔵」を原作として井上雄彦が書いた「バガボンド」への期待と同じくらい大きく、興奮したワタシであったものです。
 画風の違いもさることながら、ストーリーについてもそのまま書くことはなく、ちょっとヒネったミステリー仕立てになっていて、アトムの勇敢な戦いというよりは、ヒューマンドラマが軸になっているところがよいですね。
 原作では、より強いものを倒していく戦いの連鎖が如何に不毛なものであるか(反戦)が大きなテーマになっていたと思いますが、浦沢版はそれに加えて、心とは何なのかを執拗に描こうと試みています。それが浦沢にとっての手塚プラスアルファを狙った点なのかと感じるのですが、ドラマの中で「最高のロボットだけが心を持ちえる」という定義がそこはかとなく感じ取れる部分については、少し不満でありました。
 テーマとしては面白いのですが、そこに深入りすると難しく中途半端になってしまった所は、今作については否めないところだったんじゃないでしょうか?「このドラマの世界では、ロボットもナニもみんな心をもっているんだよ」という前提で読めれば、あんまり変なツッコミを入れたくならないんですけどね。
 「(史上最高のロボットである)アトムは生命に感動出来るのか!」と、アトムに初めてあった狂言回しのゲジヒトが驚く場面は、大変興味深く面白いシーンですが、もとよりロボットであるゲジヒトが驚くという行為をすること自体、これまた驚きでなくてなんでありましょう。
 心は人の想いの投影であり、機械自体に心が宿るということはあまり信じていないドライなワタシなのです。
 だいたい「心」とはなんなのかを誰にでも分かるように定義し共有すること自体、今の人間には出来てないからね。だからこそ、宗教や哲学や芸術という形で手を替え品を替え人間は色々理解・表現しようとしている、と思うのです。
 しかしそんな不満は些細な揚げ足とりなだけで、ワタシとしては十分楽しめた作品でありました。
 アトムが飛び立つシーンは迫力があって凄くかっこいいし、登場人物たちの悩み・想いに涙を流したワタシでありました。

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