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October 29, 2007

笑う超人 立川談志×太田光

41ioqkhmrll_ss500_ 嫌いじゃなくむしろ好きなんだけど、その芸風にアテられて直視できなくなる表現者がワタシには何人かいます。相原コージとか太田光がそうです。
 人間の奥底に眠っている蓋をしておきたい何かを、時にヒステリックなまでに見せつける様な芸風。ワタシにとって、これは不愉快というより、自分の方が恥ずかしくなってきてしまって、直視できなくなるという感覚に近いです。だから嫌いにはならない。たまには吹き出して笑ったり、そしてたまに恥ずかしく居たたまれなくなる。この感じ。

 このdvdは発売前から楽しみにしておりました。爆笑問題太田と談志師匠の談話と、太田の演出による師匠の高座が納められています。
 太田が談志師匠を崇拝しているのは以前から周知の事実で、この取り合わせ自体に驚くべきものはないのですが、談志師匠が太田の企画に乗ってきたというトコロは注目に値すると思います。自分の高座の映像は、別に自分だけで作るだけでもなんの不足もない。何故太田の企画に「よしやろうじゃないか」となったのか?
 談志師匠は予てから高座やその著作やインタビューで「落語とは人間の業の肯定である」と言ってきています。今回の企画はこの言葉に太田と談志師匠の接点の答えがありました。そして、このdvdのテーマもそのままこの言葉だったと思います。
 冒頭に言った「ワタシが直視できない」部分とは人間の業以外の何物でもなく、太田はその業を分からしめる体現者であり、談志師匠のいう落語の成り立ちと寸分の違いもないのです。
 ワタシは人間の業の体現を恥ずかしく思っておりましたが、それは実は音楽や何やらを含めて芸能というものの本質であるというのが、この作品のテーマであり、それが分かったときに全ての合点がいきました。
 ああ、俺は表現者としてまだまだだなぁ。ネットでシコシコ音楽活動を行っている某社長を見習わなければイカンですね。
 まぁね、見ている人を恥ずかしくさせるというのは、やってる方の至らなさもあると思うけどね。dvdの中で太田も「自分は至らない」って言ってたし。談志師匠の芸は、見てて恥ずかしくならないもん。

 そうは言ってますが、今回の太田は凄いです。
 まず解説書と名打ったブックレットが付いてるのですが、この太田のコメントが名文。映像見る前に読んだのですが、明快にメッセージが伝わりかつ愛情深い内容に、心打たれました。
 高座の映像の演出も客の入っていないスタジオで撮られてるのですが、これも正解だと思います。
 談志師匠は今から20年近く前のテレビでやっていた「落語のピン」で、落語の撮り方を確立したといっています。カメラを引いて高座全部を写すカメラと、少し近寄って落語家の全身を写すカメラ、そして舞台の最前列真ん中よりやや下手から見上げる様なアップ、以上3点で落語の表現が伝えられると。
 太田がこれを知らないワケはないでしょう。しかしこの3点に自分なりのアレンジを加えた映像は、現代的でスタイリッシュな感じに仕上がったと思いますね。

 もう今回は太田をベタ褒めですが、その全てを分かった上で乗っかっている談志師匠がやっぱり一番凄いですね。
 演目は「黄金餅」「らくだ」といったクセのある大ネタ。特典映像が「鼠穴」!
 「鼠穴」は「落語のピン」で見たことがあって、是非もう一回見たいと思っていたものなので、嬉しい演目でした。これも太田のリクエストだったとのハナシ。太田、やっぱりお前は良い!

 師匠は当然、前と比べてお年を召されたので、声はかすれ気味でありますが、今回も絶品。皆さん必携、繰り返し観る事。

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