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August 11, 2007

打てや叩けや源平物怪合戦 (東郷 隆)

51eu6z31il_ss500__2 東郷隆の新刊ですが、実際に発表されたのは平成3年の伝奇小説。
 源平物怪合戦という副題がありますが、実際のストーリーは平家の滅亡前後から腰越状を経て、クライマックスが堀川夜討となっている。
 面白いのは、九郎判官の旅の道筋を辿っていながら、まったく九郎判官が小説の登場人物として出てこないトコロかもしれない。頼朝だって弁慶だって静だって出てくるのに。
 伝奇小説と言われるように、幻術使いが主人公の物語なので、もう何度も取りざたされている義経の合戦部分を描くことなどしない!というような、強情ともいえる心意気なのだろうか?義経を出すと、義経のパワーに負けてしまうということなのか。
 解説の中でも書かれていますがあの時代、幻術というのは一般的に使われていたのかも知れないなぁというのは、想像に難くないと思います。民百姓に限らず日本人が信心深く生きている時代、このお札を剥がすと罰が当たるなんていう言葉は、今現在でも効果がある呪術でしょうから、あの時代のスパイ戦のようなものでも、そういった術を沢山繰り出す人間がいたに違いありません。
 また武士が台頭してきた時代にあって、武家とは何なのかを明確に捉えた東郷隆のスタンスが、物語を豊穣としたものにしていたと思います。ちょっとカッコよかったのは、以下のエピソード。

 後白河院(だいたいが悪者みたく書かれてるよね)が、義経の西国退去の際、魏の曹植の詩を鼓に書きます。
  豆を煮るのに豆の豆がらを燃く
  豆は釜中にあって泣く
  本是れ同根より生ず
  相煮る何ぞ太だ急なる

 傍の法師に、源兄弟に対する今の自分の思いだと告げ、この鼓を持って今様を謡い踊れと命じます。法師が、「今ここで?」と聞くと「神仏を称えるのに、場所は選ばぬものぞ」

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