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October 09, 2004

落とし前は泣ける程の微笑み SMiLE(Brian Wilson)

dumba.jpg ついに出ました!ブライアン・ウィルソンの「スマイル」。前作は少々辛い点をつけてしまいましたが、これも、未発表曲集だとは言っても、重みが違い過ぎます。人生の紆余曲折を乗り越えた、ブライアン・ウィルソン自身のドラマがあり、且つ、楽曲そのものの素晴らしさ。全てに感銘をおぼえました。
 左のジェケ写はジョークのつもりなんだけど、分からない人の為に、野暮天を棚に上げて、その背景を説明しましょう。

bwsmile.jpg 右のヤツが今回の本当のジェケットね。上のものは、いわゆるブートです。

 ビーチ・ボーイズとして隆盛を得ていた1966年に、ブライアンは単なる流行歌ではなく、芸術として昇華した作品をと、試行錯誤し、手がけた作品のタイトルは「DUMB ANGEL」。これが後に「SMiLE」と名前を変えることになるのですが、この作品は、1曲1曲が独立して完成されたものではなく、色々なパーツに分けて録音していました。これらを最終的に組み合わせて、組曲アルバムとして完成させようと思っていたらしいのですが、一線を歩いてきたライターとしての重圧、商業的成功だけを望むレコード会社との軋轢、海の向こうのビートルズの脅威(こんなことを言うのは恐れ多いかもしれないけど、数年後にビートルズは「アビーロード」のB面で、こういうことをやってるよね)等から、精神的に参ってしまい、完成せずじまいとなりました。まぁ、本当の理由は本人だけが知るところで、みんな憶測なんだけどね。

 で、「SMiLE」は伝説になってしまうのです。
 伝説にふれてみたいと思うのは、人情。残された録音テープが流出し、海賊盤として出回るのですが、作成方法が先に言ったようなもののため、バラバラのパーツになったものばかり。ワタシの知り合いにも、このスマイルのブートばかりを集めている人がいましたよ。あっちの方が音が良いとか、こっちは少しアレンジ・バージョンが違うとか。
 そんな中、2000年に出たブートが、冒頭の写真「DUMB ANGEL」。ブートの会社がその時点で一番良い音のものを集め、ブライアンはこうしたかったのだろうと、パーツをつなぎ合わせて作品としたものです。
 賛否両論でますやね。本人がやってないんだから。でも音は最高に良かったし、ワタシには納得できる内容で、ファンの中でも噂になっていたものです。

 しかし、今、37年の時を越えて、本家ブライアンが決着をつけて来ました。これは、驚くべきことです。相当つらかったらしいです。忘れてしまいたい事だったんでしょうね。「スマイル」を作ろうとしたことも、それを作りきれなかったことも。
 出来上がった作品は新録音とはいえ、ブートで聴かれる楽器構成やコーラスアレンジと寸分違わぬ響きがあり、「すでにアタマの中では完成していたのだ」という驚きと「ここまで同じに出来るのか?」という驚きでいっぱいです。
 しかも音は当たり前ですが、圧倒的に良いわけで、とてもドキドキします。なんと言っても、37年前と同じであるにも関わらず古くさいと感じない、否、新しいとか古いではなく、恒久的な美しさというのでしょうか?そう「美しい」という言葉が、一番言い得て妙ですね。

 ラストの「グッド・ヴァイブレーション」(あぁ、この曲大好き)まで一気ですが、くしくもこの曲がビーチ・ボーイズ初のナンバーワン・ヒットであるところが、手塚治虫の大作「火の鳥」は完結してなくて、実は最終話が「アトム大使」に続くという逸話を、ワタシに思い起こさせます。すごく色んな意味でね。

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