実に為になりお腹が空く 土を喰う日々(水上勉)
ワタシは料理人の息子なので、里芋は身が小さくなっても、皮を厚めに剥けと習ったものでした。うっかり皮が残っていると、灰汁もすごいし、口に入った時にイガイガすると。
その場はワタシの言うとおりにやってもらい、そういうものなのだと教えた形になりましたが、今になって水上勉の「土を喰う日々」(やっとこの話題になったよ)を読むと、やっぱり皮はギリギリに剥けとなっていて、飽食の時代を育った自分を省みた次第でありました。
この本によると小芋に至っては、水を張った樽の中に入れて、棒でかき回してその摩擦で皮を剥くとあります。出来るだけ薄く剥くという執念もさることながら、その手間隙に驚きを覚えたのですが、実はこの手間隙とどこまで素材を捨てずに使い切るかがこの本のテーマで、1年の四季折々の食材(精進料理がメインですが、酒の肴もあります)についての料理法と、それにまつわる随筆集となっています。
モノを大切にして、それを味わい尽くすトコロに喜びがあるのだという教えは、そんなに説教臭いものではなく、読むにつれ「嗚呼、そういう風に作った料理は美味いだろうな」となって感銘を受け、真似したくなる事必至ですよ。
ひとつ、これは是非取り入れるかと思ったのは、味噌は買ってきたものをそのまま使うのではなく、スリ鉢に入れてスリコギで十分擂ってから使うと、段違いで旨くなるという話ですね。
色々勉強になって、やってみようと思ってますが、今の時間に追われる時代、果たして味噌をスる時間があるなら、明日の為に寝ていたいとかさ、思うんだよね。飽食で豊かな時代といっても、こうしたトコロが貧困な悲しい時代となってしまったのかも知れません。
先日話題にした、ほうれん草の冷凍食品というところから、こういうトコロに話が派生して来たんですけどね。
心あるグルメな人に読んで欲しい本です。
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