「ビッグ・フィッシュ」はアメリカそのもの?
観ましたよ。「ビッグ・フィッシュ」
「人生はおとぎ話だ」というコピーに異論はありません。人間の存在自体、何故生まれて死んでゆくのかさえ、解明されていないので、みんなが好きずきに色んな意味や解釈をもって、明るく平和に生きて行こうという試みは、すべからく正しいものです。それが倫理となり宗教となり、法律にまでブレイクダウンされてしまった世の中では、奇異に感じてしまうかもしれませんが、根っこは一緒なんです。
ティム・バートンの映画は、バットマンからこっち観てなくて、最初からうそ臭い映像を持ってきて、これはファンタジーですよってやるところが、ワタシにとってあんまり熱心に見られない理由でありました。ファンタジーという垣根が出来てしまっているから、リアルに感情移入できないんです。面白い絵だなぁとか、そういう面白がり方はするんですけどね。
この映画は父と子の邂逅というか愛を描いた映画で、ティム自身先ごろ父上を亡くされたばかりということで、どういう具合に感動させてくれるのかと、楽しみにしておりました。
特撮の父と母が初めて出会う場面で、周りの動きがみんな止まってしまうとか、魅力的なシーンとあいまって、父と子の愛情がじんわりとくる佳作でありましたが、ここにワタシは別の主題があるのを見出しました。
この父親は、実はアメリカそのものなのではないかと。
まず、息子がフランス人と結婚してパリに住んでいるというプロットがあって、父親は大ぼら吹きでかつ自己中心的に話を進めるところを、恥ずかしく思っています。この設定は、ヨーロッパの各国がアメリカに対して思っている感情と、極めて似ているなあと思ったんです。息子がパリに住んでいなければ、こんなこと思いつきもしなかったんですけどね。
息子はこんな親父がケムたくてケムたくてしょうがない。そこに何の悪意もなく、すべてが愛だということを最初から判っているけど、大ぼらで煙幕を張られた向こうの、本当の実体はどうなのかを知りたい。
けど、結局楽しくやっていただけの事がわかってきて、そんなことどうでもいいじゃないか、というところに行き着くわけです。
ティム・バートンは、異端児たちの愛と悲しみを描くのが得意であるという評価がありますが、実はこの異端児というのは、アメリカそのものであり、これを優しい目で弁護しているのだなと、こういう結論に達したわけであります。
アメリカ映画というのは、正統派ハリウッドでは「正義」が主題になるのが一般的ですが、こうした家庭愛を描いた映画が実は主流です。彼がそうした映画を撮ったこともひとつ、戦争でやつしているアメリカを見つめ直してのことかもしれません。
世界の中でアメリカが弱くなってきたのも、事実なんだよね。ひとつ、優しい目で見てやってくれよと、いうところなのでしょうか。そこまで勘繰ってみると、さらに涙が出てきます。
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Comments
BARIサン、こんばんは。
すっかりBARIサンの映画レビュー・ファンになってしまいました、shizukaデス(*^^*)
そして今回のビッグ・フィッシュですが。
これもまたCMなんかで見てて、凄く気になってたんですよね。
ストーリー的にも、観た後にじんわりと優しい気持ちになれる映画だったり、
大きく感動してパッと冷めるモノよりは、
小さな感動が長く続くような映画だったりが好きなので。
この映画にもハマれそうな予感、近々観に行こうかと思います。
映画ってホントいいですよね(w
Posted by: shizuka | May 19, 2004 11:36 PM
>shizukaさん
コメントありがとうございます。
映画レビュー・ファンだなんて、お恥ずかしい・・
たまたま良い具合の映画に当って、良いものが書けているだけなので、、ちょっとプレッシャー・・・
でも、うれしいです。
ビッグ・フィッシュは卑劣なくらい、涙腺を攻撃してきますから、
要注意ですよ。
Posted by: BARI | May 20, 2004 04:26 AM